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短編小説「百日の写真」(15)
 チュチェ113(2024)年 出版

 しばらくして、敬愛する金正恩総書記と一緒に撮った栄光の記念写真を手渡す儀式があった。意義深いその日、金正恩総書記に見えた郡内の各機関の人たちが郡党委員会に集った。2百人を超えるチャンソンの人たちは同じ日、栄光の記念写真をもらったのだ。
 郡党委員会の幹部がリストを見ながら、一人一人名前を呼び始めた。
 「チェ・ソンオクさん!」
 やがて自分の名前が呼ばれると、ソンオクは幹部壇に向かったが、歩みより心が先走るのを感じた。記念写真を受け取って席に戻り、総書記のもっとも身近に立っている人が確かに自分であるのかと目をこすりながら見てはまた見た。
 そのときだった。
 「チェ・ソンオクさん!」
 幹部壇からまた彼女の名前が呼ばれた。ソンオクは辺りを見回した。私と全く同じ名前の人もいるね・・・
 しかし、郡党委員会の幹部は自分を見つめながら呼び続けるのだった。
 「チェ・ソンオクさん、早く前に出てください」
 ソンオクは胸に抱いていた記念写真を両手で差し上げながら、慌てて言った。
 「私はすでにいただきました」
 「わかっています。もう一度出てください」
 「えっ?」
 わけがわからず、ソンオクが再び幹部壇に上がると、郡党委員会の幹部は言った。
 「敬愛する金正恩総書記の計らいで、あなたの家庭には記念写真がもう一枚届いています。その日がチュンソンの百日であったことを覚えておいて、この写真を意義深い百日の写真として送ってくださいました」
 一瞬、喜びと感激が場内を沸きかえらせた。
 郡党委員会の幹部の声も感動で潤んでいた。
 「ソンオクさん、あなたの息子は本当に恵まれた子です。今日のこの栄光を忘れずに、チュンソンのような新しい世代の未来のためにも、金正恩総書記に忠実に従いましょう」
 万歳の声が場内を揺るがした。
 けれども、ソンオクはなにも感じず、偉大な父と一緒に撮った恵まれた息子の百日の写真だけを長いこと、見つめていた。
 それは、よりいっそう輝くはずのチャンソンの明日、この国の百年、千年の明るい未来が写りだされた写真であった!